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"Rockstar"

Spotifyの「トップ50(グローバル)」聴いていると、ポスト・マローンの"Rockstar"  https://goo.gl/ccebpD  が、何週もトップを走っている。ぶっちぎりの人気だ。ビルボードのランキングでも同じ。 ただ、日本の洋楽のランキングだと、100位以内にも現れない。(レコチョク「洋楽総合 ランキング デイリー 11/28 更新」 https://goo.gl/SgMcrV )このサイトの客筋が悪いのかとも思ったが、この日本のチャートにも、グローバルなチャートでヒットした曲は、たくさん入っている。 確かに、「洋楽」という感覚は、古いんだろうな。グローバルな時代だから。日本にもいい曲はたくさんあるし。 でも、"Rockstar" は、日本では、ほぼ完全にスルーされているように見えるのだが、どうしてだろう?  「PVがいや」(VEVOのは、日本人を切っている!)  「歌詞が嫌い」(聴いて、歌詞わかります?)  「人相が悪い」(そうですか) どうも、うまい理由が見つからない。 (僕が、引用したのと、表示されるPVが違ったのだが、VEVOのは、確かにヒドイ) (逆に、アメリカやヨーロッパで、"Rockstar"が、爆発的に流行する理由がわからないと、思う人もいるだろう。) ただ、「統計資料」(ヒット曲の国別のランキングですが)でわかることは、我々は、自分で思っているほど、「グローバル」でも「多様」なわけでもなさそうだということ。 それを明らかにするのが、「何を受け入れるか」というわかりやすい形ではなく、「何を受け入れないか」という無意識だが強いフィルターが存在することなのは、興味ふかい。 でも、それが、今の「時代」の一つの特徴なのだろう。

11/30マルレク「量子コンピュータとは何か?」の講演資料公開

https://goo.gl/muA5TU ご利用ください。 ----------------- 「はじめに」から ----------------- 小論は、量子コンピュータとは何かについて、一般の読者を対象に、そのオーバービューを与えようとするものである。 量子コンピュータの世界は、今、技術的にもビジネス的にも一つの展開点を迎えようとしている。その展開点とは、技術的には、この数年以内に、50 qubit程度のシステムを安定的に構築する目処が付き始めたことであり、ビジネス的には、そうした技術的達成をきっかけに、それらを利用した量子コンピュータの具体的・現実的なビジネス利用の可能性の模索が始まっていることである。 それらの到達点は、確かに、未だ萌芽的なものではあるのだが、こうした動きは、将来の量子コンピュータの飛躍を確実に準備していく軌道を切り開きつつある重要なものだと、僕は考えている。 小論では、最初に、我々が、量子の不思議な振る舞いにどのようにして気づき、またそれをどのように理解してきたのかを紹介する。続いて、こうした量子の奇妙な性質をコンピュータに利用しようとするアイデアが、どのように発展してきたかを振り返る。 続く、二つの章では、「量子ゲート型」と「量子アニーリング型」という、現在の量子コンピュータの二つの基本的なアーキテクチャを取り上げる。 最後に、各社の現時点での取り組みの状況を紹介する。ここでは、「量子コンピュータのキラー・アプリは、素因数分解での暗号破り」というこれまでの通念が、もはや働いていないことに、留意すべきかもしれない。 小論では、量子コンピュータの技術的側面を主要に述べたのだが、こうした新しい技術を牽引しているのは、新しい科学的な知見である。前回のマルレクで取り上げた、「量子情報理論」は、これからますます、理論的にも実践的にも、その重要性を増していくだろう。今後も、引き続き紹介していきたいと考えている。 今回、マルレクでの量子コンピュータの概論と並んで、演習形式で「量子情報理論基礎演習」を開講する。こちらにも、多くの人が参加することを期待したい。 量子コンピュータのビジネスに参入するには、いろいろ障壁があるかもしれない。ただ、その前提として、その基礎理論を知ることに大きな障壁はない。「紙と

「紙と鉛筆」が必要なわけ

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先に、ビジネス視点で量子コンピュータを考えるアプローチと、量子情報理論から量子コンピュータを考えるアプローチは、「通底」していると書いた。 ただ、ここには、いくつかの問題がある。 第一に、各人が、各人のビジネスの視点から、この分野への参入を考えてみよう。必要とされる資本の規模でも人材確保の面でも、ビジネス的な障壁は、AIやIoT分野よりはるかに高い。 先のGoogleの"Commercialize論文"  https://goo.gl/4qee3o  が、未来を "Super Star Effect"で説明しているように、この市場が、ITの世界の巨人たちの競争の場となり、Superじゃない人たちは弾き飛ばされ、彼ら巨人 Super Starたちの力が一層卓越する機会となる可能性は、高いのかもしれない。 第二に、個人のスキルのレベルで、この分野への参入を考えてみよう。ここでも、障壁は低くはない。 先のGoogleの"Quantum Supremacy論文”  https://arxiv.org/pdf/1608.00263.pdf  は、簡単に要約すると、量子コンピュータの開発に、小規模な(50 qubit程度の)量子コンピュータが利用できることを理論的に明らかにしたものだ。 ただ、この論文を読むのは、簡単ではない。それは、もう一つの障壁である。 それは、従来の、量子ゲートの組み合わせで、いくつかの量子アルゴリズムを記述するのとは異なる難しさがある。それは、現代の量子情報理論の言葉で書かれている。 重要なことは、この論文は、Googleにとっては、ビジネス的にも重要な意味を持っていることである。(それは、僕がいう、ビジネスと理論の二つのアプローチが、客観的には「通底」していることの、いい例だと思う。) Shorのアルゴリズムによる量子コンピュータによる「暗号解読」を「キラーアプリ」とする量子コンピュータ像は、到達すべき目標が、現在の技術水準からするとあまりに高く、いつになったら投資を回収できるのかわからないものだった。 それに対して、この論文が示すような、小規模の量子コンピュータで、bootstrap式に次の規模の量子コンピュータを開発するという方式なら、開発のそれぞれのステ

なぜ、今、量子コンピュータなのかが、よく分かる記事

それには、John Martinisが率いるGoogleのQuantum AIチームが、今年の春、Nature誌に投稿した次の記事を読むのがいいと思う。 "Commercialize early quantum technologies"「量子技術を早くに商業化する」 https://goo.gl/4qee3o   初期段階にある量子技術を、いち早くビジネスの軌道に乗せることの重要性を論じている。Shorのアルゴリズムによる暗号解読が「キラーアプリ」だというような見方は、当然していない。 その応用について、三つの優先分野を上げている。   1. Quantum simulation.   2. Quantum-assisted optimization.   3. Quantum sampling. (短いものなので、全文訳してもいいのだが、商業誌の記事なので、自粛。マルレクで話します。) 3. については、技術的には、同じGoogleのチームの次の論文が重要。 "Characterizing Quantum Supremacy in Near-Term Devices" https://arxiv.org/pdf/1608.00263.pdf   今後数年以内に実用化できる 50 qubit 程度のデバイスで、量子計算の優位性が、はっきり示せるというもの。 あと、来月のはじめに、マウンテン・ビューで開かれる、次のイベントが面白そう。 "Quantum Computing for Business"  https://www.q2b.us/ これ行きたかったな。これは、ネットでリアルタイムに流してくれそうもないからな。 Google, Microsoft, IBM, D-Wave の揃い踏み。カルテクのPreskillがキーノートをする。(Preskillのレクチャーノートには、随分、世話になった。 http://www.theory.caltech.edu/people/preskill/ph229/  ) ただ、こうした商業化・ビジネス化の流れだけでなく、前回のマルレクで取り上げたような、量子情報理論への大きな理論的関心の高まりが、僕は、本当は、大

量子bitの基礎は、難しいものではありません

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量子論は難しい物理学ですが、量子コンピュータの基礎になっている量子ビット=qubit の振る舞いを理解するのは、難しいことではありません。 次の四つの「規則」に従っていると考えればいいのです。 1. Qubitは、状態 |0>と状態 |1>の「重ね合わせ」の状態を取る。|Qubit> = α|0> + β|1> ; 𝛼^2+𝛽^2 = 1 ; 𝛼, β ∈ ℂ 2. 観測を行うと、Qubitの「重ね合わせ」の状態は失われ、0か1かの情報が返る。(普通のbitが返る!) 3. この時、0を得る確率は、|𝛼|^2 で、1を得る確率は、|𝛽|^2 で、与えられる。 4. Qubitの状態 α|0> + β|1>を、ある操作で、他の状態 α'|0> + β'|1> に変化させることができる。 この四つを頭に入れるだけで、量子コンピュータの理解が、グンと深まります。四つの「規則」を図にしてみました。 一番、大事なところは、規則の二番目だと思います。要するに、Qubitの重ね合わせの情報を知りたいと思っても、観測した途端に、重ね合わせの状態は消失して、0か1かのディジタルな情報が返るだけなのです。 (じゃ、どうして「量子コンピュータ」が可能なのでしょうね? それは、とてもいい質問です。) 11/30マルレク「量子コンピュータとは何か?」では、この辺りを、わかりやすく解説します。お申し込みは、こちらから。 http://peatix.com/event/322426/ 12/9「紙と鉛筆で学ぶ量子情報理論基礎演習」(概要と申し込みは、こちらから: http://lab-kadokawa38.peatix.com/  )では、もう少し突っ込んで、ディラックのケット表記を導入して、エルミート演算子とその固有値、量子の状態を変化させるユニタリー演算子、ハミルトニアンと簡単なシュレジンガー方程式の話をします。 こう書くと難しそうですが、基本になるのは、高校の数学の範囲に収まる簡単なベクトル・行列の計算です。紙と鉛筆で、繰り返し具体的に計算することを通じて、少し抽象的な、先ほどの概念を理解できるようにしたいと考えています。

仕分けもピルケースもいらない、忘れないお薬の飲み方

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医者から、メタボ(高血圧とか)の薬を飲むように言われているのだが、自覚症状がないせいか、薬を飲むのをつい忘れてしまう。 といって、毎日、カレンダーにチェックを入れるほどの根性がない。 若い人に、「先生たちの世代には、『健康志向』が、格好悪いと思っている人がいる」と、絶滅危惧種を自業自得とさげすむように言われて気づいた。僕も、そうだなと。 といって、「薬なんか、死んでも飲むもんか」というほどの根性もない。せいぜい、「死んでも、タバコはやめないぞ」くらいのものだ。 ある時、そうだ、薬のパッケージのうしろに日付を書き込もうと思い立った。志や良し。ただ、一度やってだけで終わってしまった。だって、面倒臭いんだもの。 ところが、最近、もっといいことを思いついた。 薬のパッケージは、大抵10錠単位で、しかも上下がある。だから、カレンダーの10日と10錠の薬のパッケージは、対応できる。日付の下の桁をパッケージ上の薬の位置に対応させれば、わざわざ、日付を描き込む必要はない。 (専門用語でいうと、Indexing 1-origin, Row-first でだ。エヘン。) いくら僕でも、10日も薬を飲み忘れるということはない。こうすれば、いつ、薬を飲まなかったかもすぐ分かる。 写真は、21日と22日の薬を、僕はちゃんと飲んだという証拠。 このソリューションには、「31日問題」というのがあるのだが、対応は、なんとかできるだろう。

「有名な数学者も間違える」-- Grothendiek, Lawvere and Voevodsky

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難しい論文を、ウンウンわかったつもりになって読み進んでいたら、途中で「なんちゃって」とか「うそピョーン」とか書かれていれば、やる気は失せるだろう。 1983年のグロタンディックの仕事  ‘Pursuing Stacks’ は、ある分野(presheaf Topos)のホモトピー論について、非常に多くの問題を論じている。それは、600ページもある。グロタンディックは、数週間にわたって、夜通しタイプライターに向かっていたと思う。 グロタンディックだって、疲れがたまれば間違いを犯す。朝になると、グロタンディックは、前夜に行った証明・説明の誤りに気づく。ただ、彼は、前夜の間違いを草稿から消そうとせず、それはそのままにして、訂正された証明・説明を朝には草稿に付け加えて、仕事を続けたのだ。 グロタンディックのこの草稿を、どのような形で世に出すべきかで、ローヴェールとグロタンディックで意見の違いが起きてしまう。 ローヴェールは、良心的な編者としては、間違った部分は削除し、それについては編者のコメントをつけて出すべきだと言ったのだが、グロタンディックは、草稿の間違いをそのまま残すことに固執した。 その理由が面白い。 「そうすれば、学生たちに、有名な数学者でさえ間違いを犯すということを学ばせるいい機会を提供することになる。」 ローヴェールは反対する。学生に提供すべきは、そんなことではなく、この本をちゃんと学生たちに読んでもらう機会を作ること。科学的な対象は、それでなくとも学ぶのが難しいのに、罰ゲームみたいな回り道を学生にさせる必要はないと、譲らない。 両者の議論は平行線で(そういえば、二人とも頑固そう)、結局、ローヴェールが編者になって、グロタンディックの ‘Pursuing Stacks’ を出版するという世紀のプロジェクトは幻に終わった。 (僕が、そうした試みがあったことに、ようやく気づいたのは、今年の夏だった。もっとも、2013年のローヴェールの発言 " FAREWELL TO AURELIO"  http://www.acsu.buffalo.edu/~wlawvere/FarewellAurelio.htm  まで、そのことを知っていた人は、ほとんどいなかったはずだ。) ただ、無茶振りをしているかに見える、グロタンデ